中村 立行 写真展「ヌード」

2006年7月4日(火)〜27日(木)

 
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中村立行(1912〜1995)は昭和20年代から女性ヌードをモチーフとした作品を積極的に発表したことで知られる写真家である。
終戦直後の世間に氾濫していた俗悪なヌード写真に憤懣した彼は、大胆なトリミングや背景の省略により女性の裸体の造形美の表現を志し、「造形派」と称されるヌード表現の一角を築き上げたとされている。

しかし彼の作品を「造形派」の一言で片付けてしま うのはいかがなものだろう。今回の写真展のため、御遺族の協力のもと残されたネガを精査していくうちにそんな疑問がわき起こってきた。まるで裸体すらも一 つのファッションであるかのようにうわべばかりが小ぎれいなヌード写真の氾濫する今日にあって、彼のヌード写真からは生々しい人の身体の温もりが感じられ る。

今回の写真展では、残されたネガにトリミングをほどこさず、ネガに盛り込まれた情報をできるだけそのままに新たなプリントを制作して展示することにした。 俗悪なエロでもなく、とりすました芸術表現でもな く、ヌード写真を安易に類型化することを拒む彼の写真眼の、目の前の存在に対する新鮮な驚きと敬意に満ちたまなざしの魅力をお伝えしたい。

林 誠治(写真評論家)


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