渡部さとる 写真展

2Bとマンデリン
―そして僕はこの町を離れる

2018年1月5日(金) -27日(土)

作家略歴


ゼラチンシルバープリント

  


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 池袋から三駅、小さな町の喫茶店に40年近く通っている。少なくとも週に一度、学生時代は毎日欠かさず、講義に出ない日はあってもお店に行かない日はなかった。辛いカレーを食べ、苦いマンデリンを飲む。
 独立するとこの町に事務所を作った。暗室があり、日当たりのいい部屋があり、やがて人が集まる場所になった。僕にとっての東京はこの町のことだった。

 2018年、この町を離れる時がきた。事務所ビルが立て替えのため出て行くことになったのだ。

 僕はずっとこの町を撮り続けてきた。駅前であったり、商店街であったり、銭湯の煙突であったり。意識は宙ぶらりん、大脳で判断するというより、小脳が反応するように撮ってきた。

 ただ、常にいつかはこの町を離れるであろうことだけは分かっていた

 松岡正剛はノスタルジーを「取り戻したい故郷が失われたことを巡る感情」と定義した。

 この表現こそが「2Bと珈琲」を巡る思いなのかもしれない。

                                           渡部さとる


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