竹谷 出 写真展

光の庭

2018年11月30日(金) -2018年12月22日(土)


作家略歴


鶏卵紙


Copyright (c) Izuru Takeya All Rights Reserved  

 


−展示案内−

21才の時、数回大学受験に失敗した後すべてがいやになり家を出、アルバイトをして貯めた金で1年オープンの航空券を買ってアフリカに渡ったのが1989年です。東、中央アフリカ12か国をウロウロしましたが、カメラを持って行ったもののほとんど写真は撮りませんでした。タイムリミットが近づいたある日、ナイロビの本屋の店頭に平積みされていたのが、MITSUAKI IWAGO 「SERENGETI」。日本に帰ってなにかをしなくては、と日々考えていた私の心になぜか響いたのがこの写真集でした。

  帰国後、市ヶ谷にある写真学校の夜間部に通い、昼は建設現場で汗を流し、一緒に働く人々の写真を撮りました。2年後、京都に移り写真関係の仕事をしながら、建設現場で知り合った不法就労の中国人を帰国後訪ねるうちに、中国の魅力に惹かれ撮り始め、1996年「路過的人」、2002年「路過的人 韓国編」をニコンサロンで発表しました。その際に声をかけて頂いたのが写真評論家の故 平木収さんでした。「一連の作品を厳密に編んでゆくと、より濃厚な東アジアの生の特質を物語ることさえ可能かもしれない」、と。この言葉に意を強くし、日本を撮り始め、名古屋に居を移してから時間と金をみつけ地図片手にあちこちウロウロし、2009年から2016年の間、コニカミノルタプラザで5回の写真展で発表したものをまとめたのが、昨年、冬青社から出版した「にほんのかけら Wandering in Japan」でした。
 
日本あちこちのスナップ写真を撮るかたわら、10年ほど前からモノとしての写真に興味を持ち、古典写真技法を英語の手引き書片手に、作る写真を試行錯誤してきました。この度お見せする写真は、私が名古屋の自宅のベランダで育てている日本自生の山野草を苔玉にし、4×5カメラで撮影し、鶏卵紙Albumen print という古典写真技法でプリントしたものです。鶏卵紙とは、1850年にフランスのエブラールが発明し、19世紀半ばから20世紀初頭までの間最もポピュラーだった写真印画法です。紙などの支持体に[卵白に塩を加えた液]を均一に塗り、乾燥後[硝酸銀溶液]を塗布して感光性をもたせ、太陽光(紫外線)での密着焼き付けしたものです。こうしてできたプリントの色調は赤褐色のセピア調で、紙の材質、卵白濃度、焼き付けの程度によって、光沢具合、諧調、最高濃度を調整します。作品制作の過程(栽培、撮影、技法)すべてに様々な光の恵みを感じ、タイトルを「光の庭」としました。写真集「にほんのかけら」の撮影と同時期に名古屋であつめた、もうひとつの「にほんのかけら」を見て頂ければ幸いです。


 


(株)冬青社  〒164-0011 東京都中野区中央5-18-20  tel.03-3380-7123  fax.03-3380-7121  e-mail:gallery@tosei-sha.jp