小林 紀晴 写真展
「 On the Wall. After Sep 11, 2001

2021年9月3日(土)〜25日(土) 作家略歴


ゼラチンシルバープリント
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いまからちょうど20年前(2001)、私はニューヨークにいました。
暮らし始めて9ヶ月がたった頃、突然二つのビルが崩壊し、それまでの日常はプツリと終わりを告げました。移動することなく、まるで知らぬ街へ来てしまったような感覚を抱きました。それほどまでに多くのことが一変しました。

写真を撮る者として、できることなら崩壊した二つのビルの間近の写真を撮りたいと切に願いました。職業意識から派生した一種の欲望、欲求に違いありません。しかし、私はその地点に足を踏み入れることができませんでした。そのエリアへの立ち入りは厳しく制限されていて、何の許可書も持っていない私には許されませんでした。

現場のすぐ近くに住んでいるのに、何も撮れないもどかしさを感じながらそれからの日々をすごしました。入ってくる情報の多くはメディアからのものでした。だから、遠い街で起きた出来事のように希薄にも感じられてきました。それでも日に日に増えていく行方不明者を探す張り紙を見るたびに、何かを撮りたいと強く思いました。決意に近いものです。

気分が乗らないまま、その日に買ったタブロイド判の新聞を、アパートの自室の壁に貼り、撮影することを始めました。淡々と続けました。結果として撮れないからこそ、撮れるものがあることに気がつきました。

現在、コロナ禍のなかにあって、何かがあの時の状況に重なる気がしています。同じく「撮れないものの存在」について考えています。

小林 紀晴  

 


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