「大切ないつもの暮らし」

田中 由美子
Yumiko TANAKA

2012年4月発行
2,800円+税
上製本/写真53点
サイズ 238x207x12mm

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 2011年3月11日、あの地震は起こりました。私は職場(東京都中野区)のギャラリーの受付に座っていました。窓からは午後の穏やかな日の光が差し込み、数名のお客様が来廊されていて、それまでは平穏な時間が流れていました。午後2時46分、ぐらぐらと地震が起こり、最初は、たまにあるような軽い地震かと思っていましたが、揺れが強くなり、しかも長い時間揺れて、書籍スペースに置かれた本の一部が飛び出して床に散乱し、私は外に逃げるべきかどうか考えながらも、何もできず立ち尽くしている間に、最初の強く長い地震は収まりました。その後も余震が続き、電車は止まり私は帰宅困難となり、翌日やっとの思いで自宅(神奈川県川崎市)に辿り着きました。ニュースで被災地の惨状を知りあまりの酷さに驚愕し、福島第一原子力発電所の事故に言葉を無くしました。スーパーからは食料品や水が無くなり、電力不足による計画停電が始まりました。ついさっきまで平穏に暮らしていたのに、一瞬にして、本当に一瞬にして、多くの人が普通の暮らしを無くしてしまいました。いとも簡単に。被災地の方々の状況は、これとは比べ物にならない、言葉では言い尽くせないほど過酷なものだと思います。この東日本大震災をきっかけに、普通に過ごせることの大切さを一段と強く感じるようになりました。

(著者あとがきより抜粋)

   

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